マックス・ガロ『カエサル!』~カエサルを語る上で忘れてはならないたった1つのこと~

 

最近歴史について、関心をもちつつある。日本史・世界史を問わず、特に天才や英雄、偉人の話については興味が尽きぬ。ビスマルクの名言に「賢者は歴史から学ぶ」というものがあるが、僕は何を学ぶことができるだろうか。

そんな思いで、ふと手に取ったのが『カエサル!』である。著者のマックス・ガロ氏のことはもちろん知らないのだが、題材が誰もが知っているであろう「賽は投げられた!」で有名なカエサルであったことと、「歴史活劇小説」という紹介文に惹かれたのだ。

(ちなみにこの記事を書きながら、大河ドラマ『竜馬伝(総集編)』を見ています笑)

 

マックス・ガロ/小林修 訳『カエサル!』

世界史上、最高最強の政治家にして、軍事的天才。混乱する共和制ローマに終止符を打ち、偉大なる世界帝国の基礎を築いた男。いかなる賛辞も過剰ではない稀代の英雄、それがユリウス・カエサルだ。「神々と王たちの血を引く」家系に生まれた青年は、策略を用い、弁舌で人を動かし、ときには自らの肉体をなげだして、人生を切り開いていく。民衆派の指導者として新しい政策を打ち出したこの男を群集は歓呼をもって迎える。かつてない迫力で人間カエサルを描く歴史活劇小説、ここに登場。

 

カエサル幼少期から、ガリア属州総督に赴任し戦争に明け暮れ地位を固め『ガリア戦記』を執筆するところまでが、『カエサル!〈上〉』には描かれている。とりあえず、今回はこの〈上〉までの情報でレビュー。

※記述していたら、なんかすげー長くなってあらすじ書きちっくになってしまったので、あんま興味ない人は以下だけでもご覧下さい!特に男性、必見!
カエサルを語る上で忘れてはならないたった1つのこと

 

…さてさて、僕は学校で何を学んでいたんだと、つくづく思いました。

 

👉カエサルとは?≪お受験版≫

関関同立の試験くらいやったら、以下を押さえとけばたぶんオーケー。

■紀元前60年~ 第1回三頭政治 (ポンペイウス・クラッスス・カエサル)

■カエサルの著書『ガリア戦記』

■紀元前48年 ポンペイウスを倒し独裁体制スタート。この時の決意の言葉が「賽は投げられた!!」
→終身の地位、独裁官(ディクタトル)、最高軍司令官(インペラトル)を独占する。
→エジプト太陽暦をもとにユリウス暦を制定

■紀元前44年 共和主義者のブルートゥス、カッシウスにより暗殺される。この時の言葉が「ブルートゥス…お前もか…!!」

 

当時はこういったことを暗記して大満足したんだよね。そしてまた次の時代の年号と出来事、人物名等々、それ単体では無意味な情報をただただ無機質に頭の中に詰め込んでいく。単なるお受験対策。そのことに気付けなかったのが、今となっては口惜しい…

歴史は、突き詰めていけばいくほど、面白いもんだった。

 

重要なのは「点」を「線」にし、「面」にすること。

高校の世界史で暗記するようなひとつひとつの出来事を「点」とするならば、その渦中の記憶すべき人物=偉人が、ある出来事を成し遂げるまでに必要とした過程を知り、そしてその時々の心情の理解に努め情報を「線」にしていくこと。

さらにそこに、周囲の人間との関係性やそれぞれの評価を、そしてそれらに対するその偉人の影響力行使がいかなるものであったかを、情報を加えて「面」としていく。そこから生まれる「示唆」こそが現代を生きる自分にとって重要であることに、中高生ん時から気付きたかったね。

 

👉では改めて問おう。カエサルとは??

…カエサルの望みは、人生を栄光で彩り、意味あるものにすることである。

…≪「運命の続くかぎり、行けるところまで行け」神々は私にそうおっしゃっているのだ≫

…≪私こそ神々に監視される身なのだ。そして、そのつど神々と出会い、神々の取りなしを受け、神々の与える試練を跳ね返していかなければならない身でもあるのだ。私が神々の信頼に足る男だということを、行動によって示さなければならない。≫

…≪見ているのだ……私がめがねに適う人間かどうか、神々は試しているのだ。≫

まず第一に、神々を強く信じる男です。

しかし、それは今でいう「信仰心」のような、神に救いを求めるようなものではない。

神々の末裔で、神々に見染められるべき王としての自分を信じ、そしてそれにふさわしい自分自身であることに全力を尽くす。そういう意味で、神に全幅の信頼を寄せているのである。それが、子供の時から である。それは母アウレリア・コッタの英才教育の賜物でもあった。

「すべてを望み、すべての行動をひとつの目的に捧げつくすのです。あなたの運命を邪魔するものは、それがなんであれ遠ざけるのです。」(by 母アウレリア・コッタ)

 

だから子供の時からカエサルの行動の全ては、神々に恥じない自分であること、そしていずれ自分自身がローマの覇権を掌中におさめることのために選択され、実行されてきたのである。そして紆余曲折あるが、結論を言えば遂にはそれを成すのである。以下が、いよいよローマの覇権を獲りに行くときの、カエサルの決断の言葉。

≪大志を抱くものを、神々が見捨てるはずがない。よし、ルビコン川を越えよう!≫
・・・「賽は投げられた!」

 

「天は自ら助くるものを助く」ということは、原理原則のようなものだが、それを体現したような存在がカエサルだったということを、まず覚えておかなければ。

 

👉神懸かりカエサル?いやいや、決してそうではない地道な道のりがあった!!

カエサル絶頂期は40~50代の時で、現代で言っても晩年である。

それまでの間、コツコツ地道に着実に、自分の能力と勇気を如何なく発揮しながら、政治力と武力、経済力を高め、謀略を尽くし、そして身分を高めていったのである。普通の人なら「もうこのへんでいいや~」と思える地位となっても、カエサルは決して満足しない。目的はあくまでローマの覇権を握ることなのである。その過程の、ひとつの到達点が【紀元前60年~ 第1回三頭政治(ポンペイウス・クラッスス・カエサル)】なわけだが、そこに至るまでの紆余曲折の物語はとても読み応えがある。

青年時代から、自身の属する一族(=民衆派:ポプラレス)が政治的に対立する、当時の独裁官スラ(=閥族派:オプティマテス)に命を狙われて亡命したり、海賊にさらわれたり。

弁舌に長け、政治の何たるかを心得ていた。しかし、カエサルには大事業を成し遂げるほどのお金はなかった。なので、大富豪の金融屋・クラッススから多額の借金をして、「出世払い」でやり過ごそうと苦心する日々。債権者に「見込みがない」と思われた瞬間、始まるであろう鬼の取り立てにおびえている。

また、一足先に若くして凱旋将軍と祭り上げられ、スパルタクスの乱を鎮圧し名を上げていくポンペイウスには嫉妬心メラメラ。

「ポンペイウスは私より、わずか六歳だけ年上だと聞く」カエサルが続けた。「彼は凱旋将軍なのに、この私はいったい何者なのだ?」

 

こんな日々が、偉人にもあったんだよ…

 

 

👉そして成り上がりを支える考え方や人間的魅力、大局観、弁舌は半端なかったようである。

※弁舌=プレゼンテーション

カエサル本人が自身の役割や能力を正しく理解し、それを適切なタイミングで発揮(披露)していく様も見もの。

例えば、戦に出れば勇猛果敢。第一線で奮闘する。そのあり方にこそ、軍人たちは畏敬を表し、従い、そしてカエサルを通じて神々の存在を感じ士気が高まっていく。こういう効果を、ちゃんと本人が理解してやっていたのである。現場に出ず、現場を知らんトップが全く尊敬されないのは、今も昔も変わらない。

≪軍団を掌握するには、指揮官も兵士たちと同じ苦労を味わう必要がある≫
カエサルはこの持論を忠実に守った。

 

大局を見る目と推し量る思考力、好機に大胆な行動をとる度胸。そしてそれまでは、余計な意見を他人に披露したりせず、努めてアホのフリをして周囲を油断させる周到さ。力を生むのは忍耐であるということを知る。「待つことは賢者の術」と言われるらしい。さらには、残酷さと寛容さを巧みに演出して人の心をつかんでいく。

…「勘違いするな。私の戦場はベッドの中だけではないぞ。」

…「今が売り出す好機だ!」(まだ何者でもない頃。この後、ローマの裁判の場で弁舌の手腕を振るい名を売っていく。)

 

こんなカエサルの将来性に期待して、大富豪・クラッススもお金を貸し続けるのであった… というかなんとしても成り上がってもらわないと、絶賛売り出し中のカエサルにはまだ借金返済能力がないから笑
綱渡りだが、その綱を上手に渡っていくカエサルに感服である。

 

👉そしてカエサルを語る上で忘れてはならないたった1つのこと

禿の女たらし の異名(称号)を持つことである(笑)
僕の親友にもハゲの女たらしがいるが、あいつはカエサルの生まれ変わりかもしれない・・・

それほどまでに、カエサルは女をたらしまくっていた。クラッススの嫁も、ポンペイウスの嫁も、みんなカエサルの愛人だからね笑 いけしゃあしゃあと、その愛人たちに「ダンナに俺ん事ヨイショしといてね~」と依頼する豪胆さ。でも後ろから刺されない、刺させない。これも、彼の人間力がなせる業だったのでしょう。。。

この連中から完全な勝利を奪いとるには、策略と戦術を練りあげ、彼らの妻たちの支援を取りつける以外に手はないのである。

 

しかも、女どころか男も抱くし、カエサル自身も目的達成のためなら嬉々として男に身を差し出すからね。若かりし頃に「ビティニアの王妃様」との異名も頂戴されている。カエサル先輩パネェ!!

…そんな一見すると快楽に溺れ、堕落しているような日々も、次の言葉で全部正当化されるのです。

…カエサルはウェヌス(ギリシャ神話のアフロディアにあたり、欲望をそそる恋の女神)の末裔である。だとしたら快楽や豪奢な暮らしに身をゆだねるのは当然の成り行きである。性の歓びとは、神の祝賀であり、神を称える手段であり、神がしるしを残し神が守護する生命を賛美する儀式である。

…ガイウス・ユリウス・カエサルは、間違いなく女神ウェヌスの正当な末裔だった。神を尊ぶがゆえに享楽に溺れる男ーーー彼は言わば、愛の僕なのである。

 

儀式  やったんだって・・・愛の僕の。
「おれ、ウェヌスの末裔やから!」で正当化されることを、僕の親友の禿の女たらしに教えてあげよう。

そしてさらに極め付けは以下の名言。三頭政治で地位を固め、未開拓地・ガリアに戦争へ赴く時、アンチ・カエサルな人から「女をたらしこむようなわけにはいかんぞ!」と野次られた時。

「バビロニアの伝説の女王セミラミスは、シリアを支配した。また伝説の女人族アマゾネスは、かつて小アジアの大部分を支配していた。今の声の主に尋ねよう。おまえはローマの女が蛮族の女たちより劣ると言うのか!?」

 

さすが弁舌で名をはせたカエサル先輩である…とっさの反論もハンパねぇ!!

 

結果だけ言えば、禿げても女をたらせるほどの魅力を身に着けとるわけやからね。しかも、このカエサルの享楽的な数々の行為は、政敵を油断させる狙いもあったことを、忘れてはなりません。みなが、まんまと騙された。

こんなカエサルの生き様を、「男の中の男!」と絶賛する男性諸君も多いはずだ。僕には無縁ですけどw

 

 

まとめ

まとめ・・・きれない!笑

歴史小説のレビューは難しいってことが、僕の得た「示唆」です(´・ω・`)

とにかく、『ガリア戦記』で地位を確固たるものにしていく40代までで、カエサルが大きな目的に向かって全くブレずに知略・策略・影響力を行使し、成り上がっていくストーリが見もの。

すべての妻たちの恋人にして、すべての夫たちの愛人……それがカエサル!

EPIC!

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