恩田陸『夜のピクニック』~青春とは××だ!!もーぎーたてのかじ~つのー♪~

泣く子も黙る丑三つ時…普段ならぐっすり眠っているはずの時間にも関わらず、少年少女たちは見知らぬ場所を徘徊している。なぜこんなことになってしまったのだろう?夜、大きなサイレンが鳴り響き、目を覚ました彼らは、いつのまにか”そこ”にいた。そしてモニター越しに見知らぬ大人が言い放った。「今日は皆さんに、ちょっとピクニックをしてもらいます」ーーーーーーーー!!

 

 

ごめんこれはウソだ!!!

どこのバトル・■ワイヤルだよ って、自分でツッこむ笑

 

なんの前情報もなしに、『夜のピクニック』という題名だけで僕が想像した物語のご紹介でした。

・・・もしくは、「夜」徘徊する子供の幽霊を巡るサスペンスホラーか。(でもこのイメージはあながち間違ってはいない。全く違う話なのだが。読んだら分かる。恩田陸さんの思うツボかもしれん。)

「ピクニック」というさわやかで健全な響きの言葉が、普通はありえない組み合わせの「夜」という言葉とひっついてるから、無性に「夜」であることに対して勝手に恐怖を感じてしまっていた。

実際は、文字通りの「夜のピクニック」だった(笑)

 

恩田陸『夜のピクニック』

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

 

これが正しい内容紹介(笑)

さぁ、マジメにレビューしてみよう。

 

「全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通す」というイベントを読書を通じて疑似体験する。

この「歩行祭」なるイベント、もし自分が参加せざるを得ないとしたら、絶対にやる前とかスタートした直後って「たるいなぁ~」って思うでしょ?

ぶっちゃけ、『夜のピクニック』読書についても同じことが言える。スタート=読み始めは、あまりノらなかったというのが、正直な感想である。

僕は「青春物語?恋バナでしょ、どーせ…」みたいなスタートを切ったのだ。

そして小説世界の中で、「歩行祭」なるイベントに参加せざるを得ない一部の脇役生徒たちもまた、こう思ってスタートを切ったはずだ。「歩行祭?張り切ってるのは運動部と実行委員でしょ、どーせ…」みたいな。今風に「歩行祭?リア充どもの祭典でしょ、どーせ…」と言い換えてもいいかもしれない。

このスタートの微妙な感じが、読み終わって振り返ってみれば「してやられたな」と思うのである。

 

「歩行祭」の行軍が進むにつれて、物語は密度を増していく。小説世界の行軍している生徒たちのテンションも増していく。そしてそれにシンクロして、読書する僕のテンションも増していくのである。まぁ、僕が単純なだけかもしれんが…

単なる「青春物語=恋バナ」ではなかったのは、間違いない。

 

お察し頂けると思うが、物語の終わりと歩行祭のゴールは同じタイミングで訪れる。その時のフィニッシュ感ときたら・・・たまらんのよ。

 

この”疑似体験”感を増すように施された仕掛け

あくまで推測ですが。

『夜のピクニック』は物語が章によって分けられておらず、話の節目というものをあまり感じない。場面が変わる時、行間が開けられたりアイコン程度のイラストが現れたりする程度である。それがまた、「歩行祭」の全体行軍によって登場人物らが感じているであろう「非日常的な連続性」と一致してきて、読みながら自分も徐々に全体行軍に参加しているような感覚になってくるのだと思う。

一番物語が転換したと感じたのは、小説世界の人物らが「仮眠」した時。ウマイね。作者のドヤ顔が目に浮かぶわ。

 

謎めいたシチュエーションと、そこに入り乱れる登場人物の心情…それがツボに入る

もちろん、「歩行祭」の全体行軍を疑似体験できるのが素晴らしいというわけではない。それはあくまでエッセンスであって、メインはやはり登場人物たちの心情描写である!

この心情描写についても、ちょっと普通じゃなかった。

ふとした言葉や文脈の中に、少しずつ”謎”や”伏線”が提示されていく。中盤にもなれば、「アレ、これ青春物語やったっけ?」と、若干の混乱をもよおす。

そうして次々に出てくる”謎”や”伏線”が、ちょっとずつ私の勘違いや勝手な妄想を引き起こし、行軍が進むにつれてそれらが僕の想像を裏切るような形でそれらが回収されていく。「あっ!」と驚く という感じではなくて、ささやかに裏切られる感じ。その感じがツボに入ってからは、一気に小説を読み進めることができた。

しかもそれらの”謎”や”伏線”は、終盤で一気に帰結するワケではなく、【謎や伏線の提示→回収】が物語の中途中途に散りばめられているので、中だるみなく飽きがこないのも よかった。

 

題材は青春っぽいのに、文章の構成も物語の内容もちょっと普通じゃないから「なんかこれミステリー?小説みたいだな…」と思ってたら、筆者の恩田さんは正真正銘ミステリー作家だった笑

恩田/陸
1964(昭和39)年、宮城県生れ。早稲田大学卒。’92(平成4)年、日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞を、’06年『ユージニア』で日本推理作家協会賞をそれぞれ受賞した。ホラー、SF、ミステリーなど、さまざまなタイプの小説で才能を発揮している。

 

あなたにしてやられた読者がここに居ますから、存分にドヤって下さい!!笑

 

でもやっぱり何といっても見どころは青春という名の青き果実ですよ!青春とは××だ!!

わだかまりや妄想や誤解や恥ずかしさ、頑固さ強情さ、傲慢さ、情けなさ、カッコ良さ、ダサさ、ひたむきさ・・・

おおよそ”青春”というモノに付随するであろう多種多様なエッセンスを、存分に眺め楽しむことができました。

だけどさ、雑音だって、おまえを作ってるんだよ。雑音はうるさいけど、やっぱ聞いておかなきゃなんない時だってあるんだよ。

青春について語るなら、『夜のピクニック』のある登場人物の、この名言につきるね。

 

 

青春とは××だ!!

もういろいろありすぎるんでしょうけど、『夜のピクニック』を通してひとつ挙げるなら、「解放」でしょかね。

物語のラスト(即ち、「歩行祭」全体行軍のラスト)に訪れる青春の圧倒的な「解放」感を、是非とも読んで味わって下さい!

 

本屋大賞とるだけあって、間違いなく名作の部類に数えられる小説でした。

以上

EPIC!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です